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痴漢対決

「いいこと考えた」そう言って、光彦は人差し指を立てた。
目を真っ赤に腫らした小山内舞と、少しやつれた面持ちの倉持理子がその言葉に反応して彼を見つめる。
二人とも、泥沼化した状況を打破する鶴の一声に期待する顔をしていた。
うんざりとした気持ちを表面に出さないように苦労しながら、光彦はもう一言
「どちらがより魅力ある女なのか、二人で勝負すればいい」と付け足した。
「勝負……って?」
倉持理子が困惑を隠しもせずにそう問いかける。
語尾に滲んだ非難めいた響きを、あわてて噛み殺したのが光彦には分かった。
挙動ひとつひとつに、光彦に嫌われまいとする必死さが見え隠れしているこの女が
彼はどうしても好きになれない。いじましい、なんて全く思えなかった。
「一途さ」の中には常に「狂気」か「自己中心性」が潜んでいることを、光彦は良く知っていた。
小山内舞にしても同様で、彼女は「光彦を愛する自分」を愛しているに過ぎないのだろう。
二人とも、無意識に一途なふりをしているだけの、勝手な女だ。
挟間光彦は、そう認識している。
だから、敢えて彼は「勝負」という言葉を口にした。
出来れば、勝負方法を聞いた瞬間に二人とも怒って立ち去ってくれればいいと思っていた。
そういう偽悪的な理由と、彼個人の趣味から、勝負のルールは定められた。
それは途轍もなく馬鹿げていて、説明する光彦自身が噴飯してしまうほどであった。

「痴漢対決」
彼はそう銘打った。

こんな対決を思いついた背景には、光彦が痴漢物のアダルトビデオを
昔から好んでいたということがあった。
中学を卒業するあたりから女性に不自由しない人生を送ってきた彼であったが、
「痴漢をしてみたい」という欲求だけは満たされることが無かったのである。
それは性欲、愛欲と似て非なるものであり、通常の性行為では代償たり得ない。
高校生の頃からそのジャンルの映像作品を観たり、ときにはそういう行為をする
風俗店にも足を運んだりしたが、その都度「これは違う」と逆に歯がゆい想いを重ねるだけであった。
彼の欲求は、本物の犯罪の中にしかその発散を望めないものだったのだ。
だからこそ、光彦は「勝負」を提案したのだ。
「電車に一時間乗って、より多くの男性に群がられれば勝ち」
彼はそうルールを定めた。
無論、この時点で二人の女が「ふざけないでよ!! 人をなんだと思ってるの!!」と激昂して
自分から離れていってくれればいいとも光彦は思っていた。
というより、恐らくそうなるだろうと彼は確信していたのだ。
最低でも、どちらか片方は脱落してくれるだろうと。
だが、小山内舞も倉持理子も、彼から目を背けなかった。
むしろその双眸には、必ず勝負を制してやるという気迫めいたものすら浮かんでいたのである。

「電車に乗ってから、降りるまで、一言も声を発しないこと」
「光彦の許可無く電車を降りたり、車両を移動しないこと」
「痴漢に対しては原則的に抵抗をせず、恭順すること」
「勝敗の判定は全て光彦が行う」

以上のルールを、二人の女に説明した。
「できるだけ沢山の男に触られてきなよ」
光彦は小ばかにしたような声でそう言った。出来るだけ、彼女らのプライドを傷つけるように。
「あと、乗る車両と、時間帯と、服装は俺が決めるからね」
さらにそう付け加える。
せっかくやるからには、二度手間にならないように、きちんと下準備をしなくては。
光彦は「馬鹿げた遊びだ」と自認しながらも、そんなことを考えていた。
舞と理子は、彼の言葉に無言で頷いている。
阿呆女どもが――。光彦はこみ上げる冷たい侮蔑の言葉を嚥下した。
時間と、場所と、二人に着せる服と、勝負前後の段取りを定めるのにそれから二日を費やした。
日本で一番痴漢発生率、検挙率、被害報告率の高い路線は西武王京線であることを調べるのに一日。
二人に着せる服装――文字通りの勝負服だ――を決めるのにもう一日である。
勝負の日時をメールで二人に送りつけると、光彦は「下らない」と思いつつも少しだけ興奮していることを自覚した。
二人同時に乗車させては、どちらがどうなっているのか判断出来ない。
かといって時間帯をずらすのはフェアでない。
光彦はそう考え、二人の勝負は日をずらして行うことにした。

肌を撫でる風が優しさを見せ始める初春の木曜日。
倉持理子は、克田台(かつただい)駅の障害者用トイレで着替えをしていた。
光彦に渡されたバッグの中から、衣服を取り出して着て、
代わりに着てきた衣服をバッグに詰めて、それを彼に返すのである。
彼女は着替え終わると自分の姿を鏡に映した。
俯き赤面する、ひどく地味な女がそこに立っている。
「いいじゃない」
光彦はそう言った。彼は便座に座ったまま、理子の着替えを見物していた。
「理子には敢えて、露出の少ない服が似合うかなって思ってさ」
「うん……」
返事と違い、明らかに納得のいっていない表情である。
光彦は頬が緩むのを抑え切れなかった。
理子の服装は、薄手のセーターと膝をすっぽりと隠すロングスカートである。
肌の露出はむしろ少なく、色合いも紫に白と地味に揃えている。
しかし、それは彼女の性的な魅力を最大限に引き出すコーディネートだと光彦は思った。
「自慢のオッパイ、強調されてていい感じだよ」
「自慢じゃないよ……」
消え入りそうな声で理子は反論した。眉を寄せた困り顔は泣き出しそうだ。
薄手のセーターの下には、下着も何もつけさせていなかった。
凝視すれば乳頭がどこにあるのか、セーターの上からでも分かるほどである。

倉持理子は、ひどく目立たない外見をした女だった。
剃っても抜いてもいない眉はやや太く、常に少し寄せられている。
その下の大きな瞳は細められ、長い睫毛は小刻みに震えていることが多い。
鼻筋は真っ直ぐ通っていて、薄い唇とマッチしている。
顔のパーツパーツはむしろ整っていて、美人顔と言っても差し支えないのだが、
自分の存在感を無意識に消そうとする彼女の挙動がその印象を薄めている。
長く黒い前髪がさらに暗そうな雰囲気を醸しており、その姿はどこか亡霊じみてすらいた。
彼女は仕事の取引先の相手から「あのオッパイの大きい娘」とか「暗そうな娘」と
あだ名をつけられることはあっても、その名前や声を印象つけることは無いのである。
理子を目立たせるには、彼女の身体的特徴を強調するのが一番だと、光彦は考えた。
敢えて露出を抑えることで「気の弱そうな雰囲気」を出しつつ、身体の線を見せるのが彼の狙いであった。
「じゃ、ちょうど六時から、さっき言ったとこから電車乗ってね」
「……うん」
心なしか顔色が悪い。
これから痴漢されに行くのだ。気分が優れないのも無理からぬころだろう。
痴漢されたくない。痴漢されなくてはいけない。
彼女が心中で、その二律背反にいかなる結論を出しているのか。
それを想像しただけで、光彦はぞくぞくと昂ぶってしまう。

女性専用車両があるのにも関らず、理子はわざわざ帰宅途中のサラリーマンでごった返す車両に乗り込んだ。
スーツ姿の男たちが、みっしりと閉鎖空間に詰め込まれている。
乗りそびれるわけにはいかない。光彦はドアから身体をねじ込んだ。
少し遅れて理子が乗り込もうとした。
車両内の男達が「ここはもう入れないから、向こう行けよ」という険のある目線を寄越す。
彼女はわずかにたじろいだ。
「ドアが閉まります。駆け込み乗車はおやめ下さい」
ホームに放送が流れる。
その瞬間、理子は男達の渦に身を投じた。
密集した男達の隙間に、か細い肉体が捻じ込まれる。
すぐに彼女は押し出されそうになったが、ドアが先に閉まってそれを防いだ。
光彦は、少し離れた場所から、理子の様子を窺っていた。
彼女はむせ返るような、疲れた中年男達の匂いに辟易した表情を浮かべている。
今にも「くさい……」とか「暑苦しい」とか声を上げそうな弱り顔だ。
そんな彼女を押し潰しそうなほど圧迫しているスーツ姿の男達。
その光景は、ピラニアの群れに投げ込まれた肉を連想させた。
理子の豊満な胸が、彼女の前に立っている男に押し付けられて歪んでいる。
彼女の周囲の空気が変わってきていることを、光彦は察した。

それは釣りに近い感覚だったのかも知れない。
放り込んだ餌に獲物が喰い付くのを、ただじっと待っているだけの静かな高揚感。
勿論、餌に食いついた瞬間痴漢を釣り上げるわけではないが。
理子の周囲に居る男達の姿を光彦は観察する。
彼らは果たして、痴漢をするだろうか、しないだろうか。
いくら扇情的な餌を放り投げたところで、彼らが性欲を押さえ込める強さを持っていれば
それに食いつきはしないだろう。人間は欲求を制御出来る生き物なのだから。
家で待っている家族のことを思えば、彼らとて軽々に犯罪行為には走れないだろう。
まずは彼らを縛っているその頚木を外さなければ、思うような絵は見られないはずだ。
光彦はそう考え、彼らに出来心を起こさせるために、
女性専用車両のある車線で、敢えてこちらの車両に理子を乗せることで
「周囲が全て男性、それも会社帰りのサラリーマンが八割方」という特殊な状況を作りあげた。
それは「女性専用車両に乗らない理子が悪い」という理由を作ることにもなる。
さらに理子に「声を出すな」と指示することで、彼らに安心感を持たせることもできる。
男達の心から「罪悪感」と、捕まるのではないかという「恐怖感」を取り除けば、
後は仕事の疲労とストレスが生んだ「欲望」だけが残る。光彦はそう読んだ。
――「正義感」なんてものは、それに比べれば大したものではないと。

男性器のことを日本では「まら」と呼ぶ。
漢字を当てれば「魔羅」である。
その語源はキリストを誘惑した悪魔にある。
「魔がさす」とは悪魔が心に忍び込み、悪意の扉を開けることを言う。
男にとって、性衝動はまさに魔であり、もっとも抑えがたい欲望でもある。
理子の後ろに立っている男の表情が変わったのを、光彦は感じた。
前を向きながら、目線は下に降りている。
口の形が、何かを言おうとしているみたいにもごもごと動いている。
左手で吊り革を掴んでいて、その反対側の右肩が不自然に下がっている。
――始まったのか。
光彦はそう感じたが、彼の位置からでは、理子がどんな行為を受けているのか見えない。
だが、彼女の表情を見て確信を得た。
さっきまでの、匂いや暑さを嫌がっている顔ではない。
眉にしわを寄せて、唇を尖らせたその顔は何かを我慢しているときのそれだ。
額が汗で少し光っていて、長い前髪が乱れていた。
間違いなく、直接的な接触を受けている。
光彦はその瞬間、自分も性的興奮を得ていることに気付いて驚いた。
痴漢されて、心底不愉快なのにそれを必死で堪えている理子を見て、
彼は欲情していたのである。それは、理子に対して、ではない。
自分がこれほど特殊な性癖を持っていたということに、光彦は戸惑っていた。

首筋にかかる息の熱さと柔らかさに、倉持理子は鳥肌を立てていた。
自分が性欲の対象となっている、ということに彼女は敏感な女だった。
大抵の痴漢行為は、まず背後から始まる。
背中に密着している男の動向に、理子は最大限の注意を払っていた。
鼻から吐かれる「はー」という勢いのある息と、
口から漏れる「はぁ……」という粘り気のある息が
交互に理子のうなじにかかる。
一瞬、肘を曲げて男と距離を離そうと思ったが、すぐに思いなおす。
自分は痴漢されなければならないのだ。
そのために乗り込んだのだ。
挟間光彦の顔を思い浮かべる。彼の姿は理子の視界に入っていない。
恐らく後ろから自分を見ているのだろう。
二の腕いっぱいに鳥肌を立てたまま、それでも倉持理子は
不愉快な吐息に抵抗せずに耐え忍んだ。
右太股に、指先が当たる触感がした。
背後の男の、黒いバッグを持っている右手が彼女の太股に当たっている。
普通に立っていれば、間違いなく当たるはずの無い箇所だ。
首筋にかかる息が、「はぁ……はぁ」と規則性を持ち始める。
欲情した男のそれだと、理子にはすぐ分かった。

白のロングスカートは生地が薄く、その上から腿を撫でている男の指遣いがはっきり分かる。
彼はバッグの取っ手を握っている右手の、人差し指と中指で理子の腿に触っていた。
「触れている」と「触っている」では受ける触感が全く違う。
「触れている」だけならば、指先は一定の力で単なる圧力をかけてくるだけである。
しかし、背後の男の手つきはそうではなかった。
二本の指先で交互に押したり、指で肉を挟んでみたり、筆のように力を強弱させたりと、
自分の肉の暖かさと柔らかさを味わおうとしていることが理子には良く分かる。
多くの女性にとって、単なる性欲だけで触れられるのはもっとも不愉快なことである。
発情した男は、ときとして女を人間として見なさなくなることがあるからだ。
男女に関りなく、自分を利用されるというのは一番気分の悪いことであろう。
理子はほんのわずか、男のほうを振り返った。
光彦がどこにいるのか確認する意味もあった。
肩を捻って、右側に首を回す。
そこで、痴漢と眼が合った。
神経質そうな一重まぶたが欲望に歪んでいる。
男のどろりとした黒目が理子を捉えている。
すぐに、理子は前を向きなおした。
恐怖と嫌悪で、危うく悲鳴を上げそうになった。
恐らく今この男は、自分と二人きりになったら迷うことなく犯そうとするだろう。
そういう眼をしていた。理子にはそれがひと目で分かった。

理子と眼を合わせたことで、恐らく痴漢は少し安心したようだ。
彼女が抵抗する意思を持たないことを確認出来たと思ったのだろう。
周囲の人間が全て男だということも、痴漢の後押しをしていた。
理子の臀部に、熱い何かが押し付けられた。むろんそれはスラックスを持ち上げる肉欲の塊である。
それは電車の揺れに紛れつつも、明らかにそれと違う動きで彼女に押し付けられていた。
尻のちょうど割れ目の部分に、ぐいぐいと。
柔らかな彼女の肉の感触を、指先よりさらに神経の集まる部分で堪能しようというのだろう。
スカートとスラックスと下着越しではあったが、彼女は十分に不快感を味わった。
それと同じだけの快感を彼は得ていることは間違いない。
熱い鼻息がうなじに掛かる。男の右手は腿から少しだけ膝に近づいていた。
最早、ある程度までは周囲に見つかっても構わない、という動きである。
最悪バレても、糾弾する人間は恐らく居ないだろう、と痴漢は読んでいるのだ。
痴漢自身も含め、仕事に疲れきったサラリーマン達に、そんな気力は無いのだから。
膝からするっと指先が駆け上る。

思った以上の成果に、口の端に浮かぶ笑みを噛み殺しきれなかった。
光彦は独特の緊張と強い興奮、そして未知の快感に身を震わせる。
理子の表情はほとんど見えなかったが、彼女を取り囲む周囲の状況は良く見えた。
彼女は気付いているだろうか。
自分が痴漢されている姿を舐めるように見ている無数の視線を。
明らかに不自然な動きと表情の男女が、とても目立っているということを。
もとより、車内に乗り込んだ瞬間からある程度人目を惹いていた理子である。
彼女が眉をひそめ、歯を食いしばり、頬肉をこわばらせ、肩を左右に揺すっている姿が
視線を集めていないわけがないのだ。
実際に触っているのは、一人だけだろう。周囲の人間はまだ、あくまでも見物人だ。
「おお、すげえ」などと思っているだけの。
だが、見物人の一人が手を出せば、恐らく連鎖的に全員が動くに違いない。

――どうだい、理子。

存在感の薄さだけが取りえの君が、今や皆のアイドルだ。
君の痴漢される姿が魅力的だからだよ。

理子は全く抵抗出来なかった。

もちろんそれは光彦との約束の履行に他ならないのだが、
そんな彼女の複雑な事情など痴漢に分かるはずもないし、
分かったとしても何も変わらないだろう。
痴漢はもう、周囲から見られることを怖れてはいなかった。
見られても構わない、と判断したのだろう。
バッグを持っている右手のみならず、吊り革を掴んでいた左手も
理子の身体の感触を味わおうと降りてきていた。
一方で理子は、周囲から見られることを極端に怖れていた。
それは「見られるとどう困るか」を説明出来ない、純粋な羞恥心からである。
排泄するところを見られるのが嫌、という気持ちと同じようなものである。
自分が痴漢されているところなど誰にも見られたくは無かった。
だから、彼女は可能な限り、動きや音を出すことを抑えてきた。
しかし、それでも太股や尻に触感を覚えるたびに彼女の身体はわずかに震える。
そしてそれに伴い、紫のセーターを押し上げている胸の肉がふるふると揺れていた。
ハンドボールほどの大きさの乳房、その先端に尖った突起がつんと空を向いている。
くずれかけたプリンのようなぐにゃりとした柔らかさではなく、
飽くまでも強さと重さを感じさせる、果実のような肉。

それが男達にとってどれほど美味しそうに見えるのか、彼女は分かっていなかった。

理子の背後で、痴漢の動きに変化が生じた。
彼女の尻に張り付いていた男の股間が、痙攣するように動いたのである。
男は唇をふるふると軽く震わせ、それから「はぁ」と長い溜め息を吐いた。
彼はすぐに理子から身体を離すと、ちょうど到着した次の駅に降りて、
小走りでエスカレータを登っていってしまった。
降りた客と同じだけ、乗客が乗り込んできて、理子も光彦もさらに
車両の奥に押し込まれていく。
トランクスの中に果てたのだな、ということは理子にも分かった。
欲望を出し切れれば、もう理子には何の用事も興味も無い、ということも。
飽くまで男は理子を肉欲の捌け口としか見ていなかったのだ。当然なのだが。
羞恥や恐怖や、或いはそれからの開放感が、全て男への怒りに転化した。
今すぐ追いかけてとっつかまえて、引きずり倒してやりたい、と大人しい理子でさえ思う。
もし自分が銃を持っていたら、迷いなく背中を撃ちぬいてやるところだ。
だが、怒ってばかりも居られない。
彼女は更に痴漢されなければならないのである。
されなければ、負けてしまう。あの小生意気な小山内舞に。

それだけは我慢がならなかった。

突然、携帯電話が震えた。理子は着信メロディからすぐに光彦からのメールだと分かった。
慌ててポケットから取り出して、カブトムシのように黒光りするそれを広げる。

「そのまま携帯をいじっていろ」

そう一文書かれていた。
一瞬の困惑。光彦の意図を推し量りかねた。
しかし言われたからにはそれに従うしか無い。
理子は仕方なしに、携帯電話のボタンを無意味に操作し続けた。
メールを作っては消してみたり、i-modeを開いてみたり。

がたん、と大きく車両が揺れた。カーブに差し掛かったらしい。
彼女の体がつんのめり、丸二秒間ほど理子の肉体は前の男にのしかかり全体重をかけた。
持っていた携帯電話と乳房との間に、男の掌が入っている。
男の太い指と指の間に、ぐにゃ、と乳房が押し込まれて形を変えていた。
思わず理子は男の顔を見る。

自然にこうなったとしても不思議では無い体勢ではあった。
理子がよろけかかってきたところに、掌で受け止めようとして
持っていた携帯電話と乳房の間に手が入ってしまった、という。

だが、理子はそうでないことが分かっていた。
彼女の乳房を押さえた手の、指先がほんの数ミリ動いたのを感じたのだ。
そして理子が身体を離すより早く、その手は下に引き抜かれた。
たわ、とまた胸が震えた。

それでも理子は、携帯電話を弄り続けた。
ここにきて光彦の指示に逆らうことなど出来ない。
何事も無かったかのように、彼女は携帯電話のモニターを見つめた。
こめかみのあたりを、汗が垂れていくのが分かった。
暑いせいでもあるし、緊張と不安のせいもある。

さっき理子の胸に触れた男が、こんどは自分から距離を詰めてきていた。
すなわち、理子に密着しようとしてきたのである。その狙いは明白であった。
彼は白々しくスーツの内ポケットから文庫本を取り出した。
そして自分のへその前あたりでそれを広げる。
読むことが目的ならば、そんな低い位置に本を広げる必要は無いだろう。

案の定、彼の文庫本を持った右手は、理子の胸元にするすると近づいてきた。
親指と小指でページを広げながら、残りの三本指でカバー側を押さえる状態である。
カバーを抑えている手の甲が、彼女の乳房をぐにゅ、と押した。

男の表情にはそれほど変化が無い。
しかし心中では「いいもの拾った」というような高揚で満ちていることだろう。
中指が、彼女の乳首に触れた。

下着を着けていないことはこれでバレただろう。
そう思うと理子の顔は、発熱したように火照るのだ。
「ノーブラで満員電車に乗り込んだ巨乳女」と相手は認識したことであろう。
そしてそれは、全く間違っていないのである。

吊り革を左手でつかみながら、右手に本を持つサラリーマン。
その目の前に少し暗そうな女がうつむいている。
男の本は、まるで女の乳房を覆い隠すように広がっている。
密着といえるほど近づいてもおらず、それほど異様な光景ではない。

だが、本のカバーの裏では、男の三本の指が少しずつ動きを増していた。
特に自由な中指はくにくにと執拗に理子の乳首を探していた。
その厭らしさに彼女は眉をしかめる。
男は相変わらずの無表情で、もし注意しても「何か?」と
言い返してきそうな涼しい表情をしている。小憎らしい。

そんなことを思っていた理子は、突然別の方向から触れられて
思わず声を出してしまいそうになった。
また別の男が、彼女の背後についていたのだ。
背後の男は、さっきの男より大胆に彼女の尻に触れた。
この男は、初手から明白に痴漢だと分かる。
手の甲で探りを入れるのではなく、掌でいきなり尻を掴んだのだ。

ぐにぐにと彼女の尻を、まるで粘土か何かのように捏ねまわす。
恐らく「この女は触っても大丈夫だ」と判断したのだろう。
そして、その雰囲気は車両内に少しずつ蔓延していった。
「ひょっとして、俺も参加していいのかな?」
そんな浅ましい欲求を、周囲の男たちは滲ませ始めていた。

目の前の本男は、人差し指と中指で乳房の肉を挟んだり、
乳首を中指でつつきまわすことに飽きてきたのか、
やがて左手を吊り革から離して、本を持ち替えた。
そして、左手を右手の甲の上に乗せて固定した。
つまり、右手が本に覆い隠された状態である。

そのまま、フリーになった右手は理子の胸を撫で始めた。
手の甲でも、指先でもなく、掌全体で。
理子が反応せずに携帯電話を弄っていることを確認すると、
やがて撫でている手に力がこもりだし、いつしか揉み始めていた。

一度その気になると、人は遠慮が無くなるものらしい。
その手はくにくにと指先で交互に押してみたり
絞るように揉んでみたり、乳首を指の腹で刺激してみたりと
まるで愛玩動物のように理子を扱いだした。

背後の男などもっと無遠慮で、ロングスカート越しに尻を掴んだかと思えば
肛門の方に指を伸ばしてきた。さすがの理子も腰を捻って拒絶する。

「赤信号 皆で渡れば 怖くない」という言葉がある。
つまりは群集心理なわけだが、確かに責任が分散することで
人間は怖れを捨てて欲望に走ることがある。
そして今この車内は、男達にとって「車の来ない赤信号」になっていた。
安心感を持たせつつ欲望を煽ることで、無法区画を作るのが光彦の狙いであった。

理子の身体が少し回転したので、光彦にもその表情が見えた。
眉がぐっと寄せられて、しわがはっきりと確認できる。
何かまぶしいものでも見ているように眼を細めている。
伏せられた睫毛がぷるぷると震えていた。
そして、両端が下がった口の中で、声を出さないよう歯を食いしばっている。

必死の表情だ。光彦にはそう見えた。
しかし、彼女の置かれた状況を知らぬ痴漢たちにはどう映っているのだろう。
きっと「嫌で嫌で仕方が無いけど恥ずかしくて声が出せない」という風に見えているのだろう。
それは痴漢たちにとって何よりも扇情的に映っているはずだ。耐える女、というモチーフ。
清楚で大人しそうで、それでいて肉感的。倉持理子は痴漢に好まれる女のモデルケースであった。
名前も知らない女の肉体を、本人の許可無く味わう。犯罪の中にしか在り得ない禁忌の悦楽。
それを目の前にして、男達は次々に罪悪の沼に足を踏み入れていく。

光彦は「欲望という名の電車」という映画のタイトルを思い出して一人苦笑した。

乳房を揉んでいる目の前の男が、電車の揺れに合わせて
理子に密着するように距離を詰めた。
男は自分の顔を、理子の肩の上に乗せるように突き出してきた。
熱気のこもった鼻息が彼女の耳朶にかかる。
産毛をくすぐられるような感触に、自分の顔が強張っていくのを理子は感じた。

本のカモフラージュは最早必要ないと判断したのか、
男は左手で持っていた文庫本をスーツの内ポケットに戻した。
そして今度は両手で、彼女の胸元に触れ始めた。
密着した肉体の間に、二つの掌が滑り込む。

男は口を開けて、舌先で耳たぶを舐めた。
くすぐったさと生理的な気持ちの悪さで、理子は反射的に首を三十度ほど傾けた。
うなじから肩、それから二の腕にかけて電流のように悪寒が走る。
それを追うようにして鳥肌がふつふつと立っていく。

しかし、その次の瞬間さらに大きな不快感が理子を襲った。

奥歯を食いしばっていたにも関らず、歯の間から息が漏れるほどである。
彼女の唇が余りの嫌悪にぐにゃりと歪んだ。

男の舌が、耳の穴の中に入り込んだのである。

耳の穴の中に、熱くて柔らかい生き物のような何かがずるりと入り込んだ。
生まれて初めての感覚に、悲鳴を上げそうになる。
奥歯を食いしばり、唇を閉ざしてもなお音が少し漏れた。

男の分厚い舌は、理子の耳の穴から這い出して、耳たぶを舐め
それから少しずつ首筋に向かってするすると降りはじめた。
れろれろと舌先で彼女の汗ばんだうなじを弄ぶ。

彼は乳房を揉んでいた左手を下げて、何故か理子の右手の甲を包んだ。
そして彼女の右手を自分のスラックスに誘導する。
男はポケットの中に理子の手を押し込んだ。
指先に弾力と熱のある肉の感触がして、理子は男が何をしたいのか理解した。
彼はポケットの上から理子の手を押している。

わざわざ握ってやる必要も無かった。
男はポケットとトランクス越しの理子の指先に、性器を押してもらうことで簡単に果てた。
痙攣しながら半眼になり、口を尖らせた表情が気持ち悪い、と理子は内心思った。

男は次の駅ですぐに降りていった。

しかし、背後にはまだもう一人の男が張り付いており、
さらに周囲のスーツ姿の群れは、観覧希望の者も、参加希望の者も、
一様にして好奇心と肉欲に眼をぎらつかせているのである。
まだ気を抜けないことを理子も十分に理解していた。

結論から言えば、この日、倉持理子は九人の痴漢に遭遇し、その内四人が射精していった。
ほとんどが自分の下着の中で果てていったが、たちの悪い一人は理子の掌に性器の先端を握らせて、
その中に大量の体液を放って去っていった。
糊のようにべったりとこびり付いた精液は液体というより流動体で、
彼女は電車を降りて洗面所に行くまでそれを握っていなくてはならなかった。

理子は男という生き物がどれだけの肉欲を抱えて生きているのか、
その仮面の内奥を初めて理解した。

彼女は洗面所で手を荒い、乱れた着衣を整えると駅のコンコースで光彦と再会した。
彼は「まずまず、良かったよ」と理子を褒めて頭を撫でたあと、
「次は舞だな」と呟いて、それからいつもの「心ここにあらず」の表情になった。

あとは小山内舞が、自分より痴漢に遭遇しなければいい。理子はそう思った。
そうすれば、光彦はもう理子から目を逸らしたりしなくなるはずだ。
光彦は、理子と逢っているときでさえ、良く虚ろな表情を見せていた。
きっと舞のことが頭を過ぎっているのだ。理子はそう考えている。

あの生意気な小娘が光彦の頭の中から消えてなくなれば、
きっと彼は私を見ていてくれる。きっと。

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