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オトリ捜査員痴漢電車 その1

この出来事は、漆戸美穂が被害を受けてから
およそ一ヶ月後の話である。

――今回の被害者は、及川真理、という。

いや、被害者、という表現は適切でない。
彼女は犠牲者だった。

生贄、と呼んでもいいかも知れない。
彼女の功績により、漆戸美穂の「復讐」は成功した。

その代わり、彼女は美穂を遥かに上回る陵辱の痕を
心身に刻まれることになる――。

先に及川真理の外的特徴について触れておこう。

彼女は二十五歳の女性で、鉄道警察隊第一中隊に勤務している。
庶務課ではない、立派な隊員である。

身長が高く、多少肩幅が広いため周囲の眼を引きがちで、
強弱のメリハリの利いた身体のラインが、それを一層強めている。

整えられた眉の下にある端の上がった眼のせいで
「気の強そうな美人」の一言で印象をまとめられがちだ。

笑うと両端が持ち上がる唇から、並びの良い歯が光っていて
健康的な生活をしていることを垣間見せている。

総じて、魅力的ではあったが、どこか近づきがたいムードも
感じさせる女であった。

人間には、悲しみや悔しさを処理する能力がある。

その方法は様々だが、長い時間をかけて
人は心についた瑕疵を自己修復していくことが出来る。

だが、人の人生にはどうしようもなく不条理があり
避けえようもない理不尽がある。

処理しきれないほどの大きい負の出来事に襲われ、
悲痛を、悔恨を、背負いきれなくなった人間は、
どうすればいいのだろうか。

答えは、ひどく単純で、簡単である。
それでいて余りにも救いが無い。

――悲しみを憎しみに、悔しさを怒りに変換するのである。

それが何も生まないとは、誰しもが分かっているというのに。
漆戸美穂の話をしよう。

彼女は花火大会に向かう地下鉄の車内で
数十人の男達に痴漢行為を受けた。

乗車率の少ない時間帯に、集団で標的を囲み
好き勝手を行う極めて卑劣、かつ悪辣な犯行であった。

直接被害を受けた美穂は、彼らがチームプレイで
女を逃がすリスクを減らしていることに気付く。

少なくとも、偶然乗り合わせたサラリーマンや若者が
痴漢現場を見て性欲を波及させた、というような偶発的犯罪ではないことは分かった。

計画的犯行である。間違いなく。

彼女は嫌というほど身体を触られた挙句、
顔と乳房に計三回射精された。

顔に精液を掛けられる瞬間を、彼女はまだ覚えている。
忘れられるはずもない。

あの筋肉男の奇声。顔に他人の体液が掛かる強烈な不快感。
それは唾を吐きかけられるより遥かに強い。

思い出すたびに、腕にざわりと鳥肌が立った。
彼女はあの日以来、一度も地下鉄に乗っていない。

だが、漆戸美穂は、泣き寝入りという選択肢を取らなかった。

彼女は溢れんばかりの悲しみと悔しさを、全て怒りと憎しみに変えて
自分の心的な外傷を克服しようと考えたのである。

まず最初に美穂が行ったのは、鉄道警察隊への投書であった。

鉄道警察隊には、痴漢対策のスペシャリストがいる。

鉄道警察隊第一中隊特務係をGroperAttackTeam,略してGATと名づけたのは
生活安全部の人間だったという。

SATのもじりで生まれた名前の通り、GATはかなり攻撃的な組織であり
痴漢・スリなどの駆逐には手段を選ばなかった。

そして、美穂が痴漢を受けた路線は
時折、集団痴漢による被害が発生していることで注目されていた。

利用客が少なく、警邏も不十分な路線は
鉄道犯罪の温床と成り果てていたのである。

それを知らずに、浴衣姿で一人乗ってしまったことは、
美穂の不幸であり、不注意であったと言える。

被害者からの直の情報を欲していたGATと、
痴漢たちへの報復を狙う漆戸美穂の利害は一致した。

親告罪である痴漢を取り締まるのに、一番有効な策は
オトリ捜査である。(ただし、集団痴漢は親告罪にならないが)

確実に現行犯逮捕が望めるうえに、オトリを散らすことで
犯罪自体の抑止にも繋がるのだから当然だろう。

卑劣を取りしまるには、こちらも策を巡らせる必要があった。
かくして、件の路線にはオトリ捜査官が配備されることとなる。

オトリ捜査は、女装した男性捜査員が行うものと制定されていたが、
実際の検挙数や抑止効果を考えた結果、
女性がオトリを勤めることを、上層部も黙認せざるを得なかった。

勿論、公にはされていない。

そんななか、美穂は鉄道警察隊に長い書簡をしたためた。

自分が、件の路線で集団痴漢に遭遇したこと。

痴漢たちは数十人で行動し、実際に痴漢行為をするのは
そのうち数人という組織形態であるということ。

獲物が乗り込むと、出入り口全てを人で封じて
車両を密室にするということ。

彼らは行為が終わると、全員で有沢山王駅にて降りていったということ。
彼らはばらばらに散開することなく、同駅にて下車したということ。

それらの情報を書き綴った。

去り行く夏のことを忘れ、訪れる冬を意識しない、そんな曖昧な季節。

一人の女性捜査官が、オトリとして地下鉄の階段を下りた。
当然、上層部の許可を得て行われた作戦である。

危険極まりないことは誰が見ても明らかなうえに、
適法性の怪しいおとり捜査とあって(日本では原則的に違法)、
自らエサになろうとする女性捜査員は五指に満たない。

それら志願者のなかで、容姿の面から痴漢をおびき寄せるに適したと
判断されたのは彼女ひとりであった。

及川真理。
集団痴漢の実態の調査と、その現行犯逮捕が彼女の任務である。

ブーツを履くと170を越す背丈に、テンガロンハット。
サングラスの上に垂らした長い茶髪。
黒のタンクトップに書かれた「CANYOUFORGIVEME?」という英文が胸の隆起に歪んでいた。
デニムの超マイクロミニから伸びる脚は、初秋の風を物ともしない。

この格好は、人目に付くことを目的をしたものである。
オトリ捜査初日、彼女はそんな「ギャルそのもの」の姿で電車に乗り込んだ。

真理の乗る車両と、その前後車両に二人ずつ
男性の私服捜査官を乗せ、
更に各駅のホームにも二人ずつ人員を配置した。

五十人近くが動いた一大取締り作戦である。

しかし結果から言えば、作戦は失敗。痴漢は影すら見せなかった。
無関係のスリが一件捕まっただけの成果であった。

毎日このレベルの警備が出来れば、この路線がここまで荒廃することも無かった、
というほどの動員であったため、痴漢も動けなかったということである。

痴漢たちは、移動を目的に電車に乗るわけではない。
それは確実であった。

彼らは、電車内を痴漢に最適と判断し、
その愉悦を存分に楽しむための組織を形成し
さらには組織内のルールまで作り上げている。

そう予想された。
それほど、彼らの犯行は秩序的であった。

何せ、壁役になる男達は女性に触れもせずに
ただ、密室の防壁に徹しているくらいである。

そんな痴漢たちが、これほど見え見えの警戒態勢に
気がつかないはずは無かった。

一ヶ月間、人員を減らしながらもオトリ捜査は続けられたが
痴漢たちは影も形も、その気配さえも見せなかった。

オトリ捜査が一旦、中断したのは
初日からちょうど32日後のことである。

そして、痴漢たちが次に犯行を行ったのは
そのわずか二日後であった。

「懸命の捜査をあざ笑うように」という比喩が最適であり、
丸一ヶ月間オトリに徹して待ち続けた真理には
本当に彼らの笑い声が聞こえるような気分であった。

放置しては置けないが、人員を増強しても意味が無い。

電車内に監視カメラを仕込むなどの対応策もあげられたが、
法的に不可能であったり、予算の問題で不都合であったり
実現に対して様々な障碍があり、思うようにはいかなかった。

勿論、警邏を強化すれば犯行は未然に防げるが
強化する予算の無い路線だからこそ、こういう事態になったのである。

手詰まりなのは誰の眼にも明らかであった。

そんな状況で、及川真理は再度オトリ捜査を再開することを提案する。
彼女の出した策は、捜査というカテゴリを逸脱した違法・違憲なものであった。

捜査員を全て、終点前の有沢山王駅に集め
下車した痴漢たちを一斉摘発するというのである。

オトリ作戦をする前に、まず敵の警戒を解かなくてはならない。
「路線全てが厳戒態勢」では、敵に勘付かれてしまう。

それはとりもなおさず、有沢山王以外の駅、電車内には
真理以外誰も捜査員が居ない状態にするということでもある。

自分が痴漢の餌食になる、と言っているのとほとんど同義であった。

逮捕のためであれ、犯罪が起こることを前提とした捜査など
あってはならぬことであり、それは管理官や隊長を含む上層部には否定された。

捜査初日には感じなかった肌寒さに、及川真理は身を震わせた。

武者震いの類でも、恐怖に震えたわけでもない。
単純に、寒さのせいだ。

彼女はそう思うことで、ともすれば気負いがちな自分を諌めた。

久しぶりに降りる地下鉄の階段は、相も変わらず汚い。
寂れた駅のコンコースにはチリが転がっていて、
早足で駆け抜けたくなる衝動に囚われる。

寒いな、という言葉を真理は口に出す。

初日のようなB系ファッションとは全く違う、
地味なセーターを着ているというのに、
それでも震えは止まらなかった。

棗駅のホームは、ただでさえ照度の足りない蛍光灯が
幾つも球切れしていて暗かった。

スニーカーが床の上を滑る音以外、物音ひとつしない。

白線の上に立って、真理は電車が来ないか
線路の先の方向を見た。

だが、そこにあるのは線路を飲み込むただの暗がりだけである。
静寂と漆黒。真理の身体がまた震えた。

電車まで七分。
覚悟を決めるには十分な時間だ。

この作戦は、公には許可が下りていない。

真理は自分の意思で電車に乗り、「たまたま」痴漢に遭う。
そして「たまたま」居合わせた捜査官と協力して、痴漢を捕縛する。
――そういうことになっている。

100円の紙パックが並ぶ自動販売機のガラスに、
真理の姿が映っている。

黒のセーター、黒い長髪、灰色の長いスカート、右手にバック。
恐ろしく地味で、物静かな雰囲気。

この方が、露出するよりむしろ痴漢の興味を惹く、と考えた。
その欲求の心理をトレースすることは出来なかったが。

伸びた爪が掌に食い込むほど、拳を握る。
息を吐いて、また手を開く。

公式捜査でないため手錠も持っていない。彼女は本当に身ひとつだ。
数十人の男相手に戦っても勝ち目は無いだろう。

つまり、彼女の任務は、痴漢たちをおびき寄せ
彼らを終電前の駅まで連れて行くこと「だけ」なのである。

白線の内側にお下がり下さい。
スピーカから流れる無機質な声に、真理の身体が硬くなった。

誰も乗せていないくせに、堂々と電車は遅れて滑り込んできた。

真理は中ほどの車両に乗り込み、座席の前に立つ。
そしてバッグを持っていない側の手でつり革を掴んだ。

あざと過ぎない程度に、痴漢の興味を惹く体勢を取る。

奴らの警戒心は並ではない。
ちょっとでも不審なものを感じれば、快楽におぼれることなく
電車を降りて遁走してしまうに違いない。

そこまでして痴漢行為をしたい、という彼らの心理や思考は
真理ならずとも理解できるものではないが。

痴漢でなければ味わえない快楽があるのか、それとも何か特殊な目的があるのか。
いずれにしても、自分たちのエゴのため、罪無き女性を嬲っているということだけは事実だ。

真理は感情を表面に出さないよう努めた。
棗から、北棗、鞍馬の三駅間は誰も乗車してこなかった。
真理は黒い車窓に映る自分の姿をぼんやりと見る。

そしてふと、実は痴漢たちが悪辣なのではなく
自分が単に彼らのお眼鏡に適わなかっただけなのではないか、という懸念を抱いた。

長い髪をわざわざ黒に染めなおし、化粧も極力控え目にした。
黒と灰色で統一されたファッション。地味でやや蔭のある女。

それと同時に、肉体のラインを強調することも忘れてはいない。
少し薄手のセーターは、真理の盛り上がった双丘を強調する。

灰色のロングスカートで長い脚を覆い隠してはいるが、
僅かに見えるふくらはぎの白さが逆に強調されている。

食いついてくるはずだ。
後は、痴漢をおびき寄せ、食い止めるだけだ。

四駅目にして、初めて乗客が乗り込んできた。

白川能美駅で乗り込んできた乗客は、気弱そうなサラリーマン一人だった。
メガネの奥の細い目が、肝の小さそうな印象を強めている。

一人ならば、恐らくは奴らの一党ではあるまい。
真理はそう判断し、内心舌を打った。

部外者が入ると、作戦に支障をきたすかも知れない。

そんな焦燥を、可能な限り隠そうと思った彼女は
バッグから携帯を取り出して、悠々とメールなど打ち始めた。

走行中の地下鉄車両なので、携帯は圏外であったが
それでも彼女は意味も無く、ぽちぽちと電話のボタンを押し続けた。

すぐに虚しくなって、バッグに電話を戻す。
そしてふと、顔を上げた彼女は、車窓に驚愕の光景を見た。

――真後ろだ。

彼女は緊張を悟られまいと、目線を広告に移す。
真理と同じようなスタイルをした女が微笑む出会い系サイトの広告。

貴方の結婚、応援します。

それを見ながらも、意識だけは背後に集中している。
真理は断続的にスカートをなでる、手の甲の動きを感じていた。

さっきのサラリーマンなのは間違いない。
それにしても、なんという男であろうか。

真理と二人きりの車両である。
彼女が大きな声を出して暴れたとしたら、逃げ場が無い状況だ。

座席に誰も座っていない車両なのに、
何故か立っていて、しかも密着している男女。

傍から見ればさぞかしシュールな光景だろう。

真理は、過去に何度か痴漢行為を受けたことがある。

電車なり、路上なり、そのシチュエーションは様々だったが、
例外なく彼女は猛然と反撃し、その犯人を捕縛してきた。

セクハラじみた行為に対しても、彼女は
頑ななまでの正義感で対抗してきた。

女だから、という理由で悲しい目に逢うなんて
許容されていいはずがない。彼女はそう考える。

戦うべきだ。彼女はそう考える。
だが、今はその為に、耐えなくてはならない。

尻を撫で回す不快な手の甲に、及川真理は
気付いていない振りをした。

ふ、と尻を押す圧力が無くなった。

振り返りたい衝動を堪えて、真理は窓ガラスを見る。
男は真理から二歩、後ずさっていた。

まさか、単なる単独の痴漢?

身体の全ての汗腺が熱を帯びたように熱くなる。
振り返って、すぐさまメガネの男を取り押さえたくなった。

車窓に、真理の数歩後ろで携帯をいじるサラリーマンの姿。
怒りに跳ね上がりそうになる脚を彼女は押さえ込む。

そんな戦いの構図を内包しながらも、電車はのんびりと亜森崎駅に滑り込んでいく。
そして、この駅で、真理の周囲の状況は一変した。

亜森崎駅で、彼女の乗っている車両には20人余りの乗客が乗り込んできた。

前のドアからも後ろのドアからも、どかどかと人が入り込む。
真理の身体は押されて車両の真ん中付近まで下がった。

客は全て男――。
そして、他の車両には人が乗っていない。

真理は、この連中こそが、この路線に巣食う悪意の集団であることを確信した。
それと同時に、全身でその襲撃に備える。

耐えることが、自分の仕事だ。
たとえ、どれほどの屈辱を与えられても、
彼らを有沢山王まで連れて行けば、私の勝ちだ。

眉にしわが寄っていることに気付いて、彼女は顔から力を抜いた。

舐めるような視線、という言葉がある。

女性の身体の表面を、そこを弄ぶことを想像しながら
ねっとりと眺める目つきのことをそう呼ぶ。

「いい身体してやがる……」
「あの乳、揉みほぐしてえ……」
「もうちょっとでパンツが見えそうだ……」
「綺麗な脚しやがって……」

そういった原始的な劣情をもよおしたとき、
男の目線は「舐めまわす様な」ものに変わるのだ。

そして、女性はそういった風に見られることに対して
敏感であることが多い。

真理も例外ではない。
むしろ、フェミニズムを提唱する彼女は過敏なほどであった。

見られている。
数十もの視線が、自分に刺さっていることを彼女は感じる。

ドアの前に、さっきのメガネ男が立っていて、
無表情を保とうとしてもなお、押し殺せないといった笑みを浮かべている。

彼女に纏わり付く幾つもの「舐めまわすような視線」。
性欲の対象にされているという実感。

彼女の腕に、ざわ、と鳥肌が立った。
産毛が衣服のこすれすら感じるほど敏感になっている。

周囲の男達が、自分を中心に円陣を組み
そして、少しずつその半径を狭めていることに真理はすぐ気付く。

次の攻撃は、手の甲ではなかった。

見られている。
数十もの視線が、自分に刺さっていることを彼女は感じる。

ドアの前に、さっきのメガネ男が立っていて、
無表情を保とうとしてもなお、押し殺せないといった笑みを浮かべている。

彼女に纏わり付く幾つもの「舐めまわすような視線」。
性欲の対象にされているという実感。

彼女の腕に、ざわ、と鳥肌が立った。
産毛が衣服のこすれすら感じるほど敏感になっている。

周囲の男達が、自分を中心に円陣を組み
そして、少しずつその半径を狭めていることに真理はすぐ気付く。

次の攻撃は、手の甲ではなかった。

自分より、腕力・体格に優れる人間に囲まれるというのは
想像を超える圧迫感があった。

しかも彼らは明確な害意を抱えている。
心臓にじかに氷を当てられているような冷たい不安と緊張があった。

覚悟を決めて電車に乗った真理ですら、こうなのである。
偶然彼らと出くわした被害者たちの恐怖はどれほどであっただろうか。

心理的圧力に押し潰されそうになりながらも、真理は
敵の陣形や人数、顔や年齢などを観察していた。

真理を囲むのに八人ほど。
出入り口を押さえる壁が十人いるだろうか。

壁役は、まるでこちらに興味が無い、という様子で
新聞紙を広げたり、携帯電話をいじっている。

真理の尻を撫でていた手が突然ひっくり返った。

堅い手の甲の感触が、指先のそれへと変わる。
「触れられている」状態から「触られている」という状態へ。

声が出そうになるのは、かろうじてこらえたが、
彼女の腰はびくん、と過敏に反応してしまった。

男の大きい掌から、体温が伝わってくる。
彼は間違いなく興奮している。発情している。

彼は人差し指と中指を交互に曲げながら、
真理の尻の感触と、彼女の仕草を楽しんでいた。

ここで無反応では却って怪しいだろう、と真理は判断した。
彼女は首だけ後ろに回して、背後の男をにらみつけた。

痴漢と目が合う。

及川真理は、目の端がやや吊りあがった顔立ちをしている。
普段から「怒ってる?」と訊ねられることが多い。

素の表情が、人からは仏頂面に見られてしまうのである。
そんな彼女が怒りを込めて睨みを効かせると、その威圧は凄まじい。

事実、真理が「何触ってんの」という強い激昂の篭もった視線を送ると、
背後の痴漢は彼女の美しい双眸から目を逸らした。

その顔からは怯えが感じられる。
根は臆病な男なのだろう。

悪いことをしている、という意識を持ちながら
快楽の大きさに逆らえない醜悪な性。

真理は最大限の嫌悪と軽蔑を、視線に込めた。
魔法のように、男の動きが止まる。

不思議と、周囲の男達に動きは無かった。

睨みつける真理と、怯む男。
その周囲には、まるで野球でも観戦するみたいに
呑気な表情の男達がいる。

真理と目を合わせないように、男は首を傾けた。
シンカーのように、視線が左下に逃げる。

背後から尻を撫でることは出来ても、
睨まれながら触ることは怖くて出来ない。

それがこの男の限界なのである。
見下げ果てた男であった。

電車がカーブに差し掛かり、車内の人間の体が左右に揺れた。
真理は吊り革を強く握る。

電車が揺れた。

強い水平方向の重力に、真理の細長い身体が
「く」の字に折れた。

さっきの男が、真理の目の前で同じように身体を揺らしている。
吊り革を掴んでいなかった彼は、前後に一歩ずつ足を踏み出していた。

それを見ていた真理の尻を、太い指がつまんだ。

多少気を抜いていた彼女にとって、それは奇襲に等しい。
腰がびくんと跳ねて、「く」の字から、いきなり「気をつけ」の姿勢に戻った。

そして吊り革を掴んだまま、きっと背後を睨む。
筋肉質の男が、左手の中指を親指をこすり合わせている。

彼は揺れる車内の中でも、何を支えにするでもなく
床に根を張ったように安定していた。

「次は~香院寺~香院寺~」

在日二年目のイラン人のような発音が、車内に流れた。

真理は首だけを回して、背後の男を睨んだ。
筋肉質の男は、さっきの男とは違い、彼女の目線を真っ直ぐに受け止めている。

――寒い。

彼女は膝の裏に風を感じて、とっさにそう思った。
ひんやりとした、素肌に外気が触れる感触。

瞬間的に、彼女は状況を察知して
自分の尻を掌で隠した。

めくり上げられていたロングスカートを上から押さえ込む。
真横に立っていた男が、めくっていた手を離した。

「綺麗な脚だ」
彼は小さくそう言った。

真理は男達を、攻撃してきた順に睨み返した。

尻をつまんだ筋肉質男。
スカートをめくった男。

だが彼らは怖じるでも悪びれるでもなく、真理の視線を受け流した。
いやむしろ、睨まれることに喜びを感じている。

真面目で気の強そうなこの女が、最後にはどんな顔で泣くのか。
男になんて負けない、なんて強がった顔したこの女が、どんな風に股を濡らすのか――。

それを楽しみに待ちわびている顔をしていた。
確実にこの後訪れる悦楽を、自分を焦らすよう待っている顔をしていた。

人間の悪意が、ここまで収斂した表情を、真理は初めて目の当たりにした。
全身が竦むような恐怖。

けれど、彼女には逃げるわけにはいかない理由があった。

 

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