教え子の目の前で

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午前七時二分、駅に滑り込んできたオレンジの車両に、久保曜子は、走って飛び込んだ。

ドアが閉まる直前に、満員の電車に身体を投げ込んだのだから、当然車内に居るコート姿のサラリーマンや、陰気な表情の中年女性にタックルをかます形になる。

「駆け込み乗車はおやめ下さい」というアナウンスが自分を責めているような気がして、彼女は思わずうつむいてしまった。
ドアが閉まると、車窓風景が動き出し、電車に乗りそびれた悔しそうな顔が加速度的に遠ざかっていく。

曜子は吊り革に掴まるために右手を伸ばそうとしたが、余りにも周囲の人間に押し込まれていて、手を上げられなかった。
やむなく鉄の柱に手を添える。

東海道線の退屈な車窓風景に視線を投げると、曜子は耳にイヤホンを押し込んだ。
流れてくるのは世界と自分を切り離す、大音量のHIPHOP。

曜子が見慣れた顔を見つけたのは、電車が動き出してから数分が経過したころである。

――ミサキ先生だ。

咄嗟に曜子は、彼女に自分の存在をアピールしたい気持ちになったが冷静に考えると満員電車内でそれは難しいことが分かった。
むしろお互いを認識すると却って気まずいかも知れない。

i-podnanoのイヤホンを耳に入れて、更に窓の外に意識をやっていた曜子が国枝美咲の存在に気付いたのには理由があった。

その表情が、あまりにも周囲より歪んでいたからである。

勿論、月曜の朝の――それも満員のだ――通勤電車に乗っている人間は多かれ少なかれ憂鬱を感じているものである。
ではあるのだが、それを差し引いても国枝美咲の表情は異常といえるものだった。

曜子は、ミサキ先生のこんな表情は見たことがなかった。

顔の両サイドを隠すように下ろされたストレートヘアは、頭頂部で綺麗にセンターで分けられていて、生真面目さを強調するかのようである。

露になった額の下には細いふちのメガネがあって、レンズの奥には、理知的という言葉そのもののように冷めた瞳がある。
真っ直ぐに高い鼻と必要以上には開かない唇がその印象を強めていた。

学校で、英語を教える国枝美咲の表情は常に冷厳としていてその態度はときとして剣呑な印象を与えることもあった。

しかし、その姿と生き方は女生徒達から羨望を集めていて、曜子も彼女のようになりたいと思う一人であった。
ミサキ先生、と馴れ馴れしく呼ぶのも、彼女と少しでも距離を近づけて少しでも彼女と同化したい、という心理の表れだったかも知れない。

曜子には、ミサキ先生のことなら他の生徒達より知っているという強い自負があった。

それゆえに、このときのミサキ先生の表情に、彼女は驚愕したのである。

何か重たいものを持っているのだろうか、と曜子は思った。

自分の腕力では限界に近いくらい重たいものを、持ち続けているときの表情。
ミサキ先生の今の顔は、それによく似ていた。

口を閉じていても、頬の歪みで分かるくらいに強く歯を食いしばっている。
眉には深い深いしわが寄っている。
鼻に力が入って、少し赤い。頬も紅潮している。
瞳は潤んでいて、そこには少しだけ「もう無理だ」という弱音が滲んでいる。
体が震えているようにも見える。

今にも怒鳴り散らしそうなほど怒っているようにも、今にも泣き出しそうなほど困っているようにも見えた。

何か重たいものを持っているのだろうか、という自分の考えを曜子はすぐに否定した。

なにせ電車の中である。
荷物を持ち続ける必要は無いのは当たり前だ。
それともトイレを我慢しているのだろうか。

時折、ミサキ先生は後ろを振り返った。
首だけを45度回転させて、視線を背後に送る。
まるで誰かに追いかけられているみたいに。

それから前を向いて、またさっきの困った表情。
たまに肩を上下させて、溜め息をつく。
曜子は、こんなに落ち着きの無いミサキ先生を初めて見た。

額に浮かんでいる汗が、数メートル離れた曜子でも確認できる。
下唇を強く噛んでいる歯が見えた。

何かを耐えている。
それは確実だった。

それがトイレであるのか、或いは荷物のせいなのか、
または暑さなのか、匂いなのか、痛みなのか、
それら全てなのか、いずれでもないのか、曜子には全く分からない。

何かに耐えている。苦しんでいる。それだけは分かった。
自分に何か出来ることはないか、と曜子は思った。

ミサキ先生を苦しめている「三本の腕」のことなど、
彼女には想像することすら出来ていなかった。

国枝美咲は、生徒の一人が自分を見つめていることに全く気付いていなかった。

茅ヶ崎駅で車両に乗り込んだときから続く「戦い」に懸命で、それどころではなかったからである。
もっとも、戦いと呼ぶにはそれは余りにも一方的であった。
彼女は突如、想定しない場所に、想定しない攻撃を受けたのである。

黒のふんわりとしたロングスカートの表面に、手のひらが三つ、這い回っているのである。

圧力を強めたり、或いは弱めたり、
中指と人差し指を交互に動かしてみたり、
或いは肉をやんわりとつかむ様に力を入れたり、
三つの手のひらは、様々な動きで彼女を翻弄した。

美咲の肉の感触を、出来るだけ濃く味わおうという強い欲求がそこには感じられた。

太股のつややかさと、伸びやかさを。
尻肉の柔らかさと、温かさを。
指を沈み込ませたり、こすりつけたりすることで堪能しているのである。

最初、手のひらは一つだった。

美咲はそれをつねって妨害しようとしたが、彼女の爪は短く切りそろえられていたから、余り尖っておらず攻撃力は大して無かった。

男の手のひらは異様に温かく、その指先の動きには間違って触れたときとは全く違う意思がこもっていた。

最初は彼女の反応をうかがうように撫でるだけだったが、美咲が無視を決め込もうとすると、その行動は増長し始めた。
臀部を五本の指で押さえ込むようにつまんでみたり、ピアノを弾くように指で交互に押してみたり、ゆっくりとマッサージをするように揉み解してみたり。

それでも放っておくと、その指先は背骨をなぞるようにしてゆっくりと降下していき、尻の裂け目をスカート越しに押し迫ってきた。

肛門に指先が当たる感触がした瞬間、美咲は思わず振り返って、触っている男を睨みつけた。

「この人、痴漢です!!」と大声で糾弾することを何度か考えたが、静まり返った電車の中で、それをすることは中々勇気が必要だった。

むしろ、ドアが開いた拍子に駅に突き落として、「こんなことして恥ずかしくないの!?」と怒鳴りつけてやるほうがまだ楽なような気がした。

どうせ、こういう行為をする人間は姑息で矮小で、面と向かって糾弾されれば抵抗の出来ない男であるに違いない。

そう表面上では考えていたが、美咲の深層心理の奥に恐怖や不安が一握も無かったとは言いがたい。

苛立ちや怒り、焦りや不快感。
そういった強い炎のような感情の奥底に、押し殺した彼女の弱さ。
それを美咲自身が自覚するにはまだ危機感が足りなかった。

電車が大船を過ぎる頃、美咲にとって予想だにしなかったことが起きた。

手のひらの数が増えたのである。
それも、さっきから触っている男とは違う手のひらが。

美咲の左右に立っていた男二人が、突如「その他大勢」から「敵」に切り替わった。

一方向から襲いくる敵を対応しているときに、突如別方向から敵が現れれば、その対応は難しい。
増して、苦戦しているときならば尚更である。

どんな名将であっても予想しない方向からの増援は恐ろしいものである。
故に、それは古来から戦術の基礎として用いられる。

「伏兵」という言葉そのままの攻撃に、美咲は戸惑いを隠せなかった。
尻に触れる手のひらに意識を集中させて、この相手をどう成敗するか考えを練っている矢先に、二人敵が増えたのである。

「囲まれている」という状況を認識して、いよいよ美咲の強固な精神の鎧に亀裂が入り始めた。
「誰かに助けて欲しい」という弱い気持ちが滲み始める。

容赦も遠慮も呵責もなく、三本の手は彼女の下半身を撫で回し始めた。
見ず知らずの女の肉体こそが、この世で一番甘い果実だとでもいうように。

電車が川崎駅に着くころには、三人の男たちは美咲の下半身の形状と感触、そして彼女の過敏な反応にすっかり虜になっていた。

険しく歪む細い眉毛、小刻みに震えている睫毛、
動揺を隠し切れない瞳、それでもなお毅然としようとする表情、
時折びくんと弾む動き、男たちを睨みつける怒りと懇願の混じった視線。

それら全てが、三人の男の嗜虐を煽りたて性器の先端にどくどくと力を注ぎこんでいく。

背後の男は、スカート越しに肛門や性器に触れようと股間に指先を捻じ込む。
左の男は太股の感触を楽しむ。
右の男は恥骨をなぞり、肛門とは逆の方向から股間に触れていく。

その三本の手を払いのけようと、美咲の両手は動いたが彼らはわざと払いのけられては再び触れてみたり、
彼女の手首を掴んで押さえ込んだりと、稚拙な抵抗をむしろ楽しむように扱っていた。

もし自分が格闘家ならば、この周囲のニヤニヤと汚らしい笑みを浮かべる男たちを思い切りぶん殴り、股間を蹴り上げ、悶絶したところに膝蹴りをしてやるのに。
そう思って美咲は自分の無力を痛感する。

痴漢をされる側の気持ちは、男には俄かに想像し難いものがある。

物理的に、腕力で到底敵わない相手に、複数で狙われる恐怖と絶望感。
初対面の相手に肉体を弄られる嫌悪と不快感。
自分を人間としてでなく、オブジェクトとして見られる憤怒と屈辱。

どう説明したところで、男には理解し難い感覚だろう。
いや、最初の二つまでならなんとか説明できる。

例えば、筋肉質な黒人の同性愛者にトイレの個室で囲まれたシチュエーションを考えれば男性にも少しは伝わるかも知れない。
マッチョのホモに身体を撫で回されて、キスをされて、肛門から犯されることを想像すればその強い恐怖と絶望、嫌悪と不快感、憤怒と屈辱を理解できるだろうか。

いずれにしても「もてあそぶ側」にとっては、被害者のそんな心情は知ったことではないし、忖度するつもりも無いのだろう。

食事をするときに、食べ物に遠慮する必要が無いように、
睡眠をするときに、ベッドに遠慮する必要が無いように、
排泄をするときに、便座に遠慮する必要が無いように、
彼らは痴漢をしながらも、美咲に遠慮をすることがなかった。

周囲の人間は誰か気付いていないのか、と美咲は思う。

実際、三人の男たちの腕の動きは結構大きく、それを払いのける美咲の動きも相当なものである。
動きそのものもそうだし「争っている雰囲気」のようなものは周囲に伝播しないものだろうか。

しかし、月曜の朝の東海道線の中には無関心だけが満ちていた。
痴漢以外の誰もが「今すぐ帰ってベッドで寝たい」とか「会社行きたくない」とかいったネガティブな思考に押し潰されかけているようだった。

また、中には明らかに気付いていて、美咲にちらちらと視線を送っている者も居たが彼らが正義感を露にして、自分を助けてくれるとは到底思えなかった。
スポーツ新聞の上から、美咲の様子を窺っている熟年のサラリーマンも、ヘッドフォンからシャカシャカと音を漏らしている高校生も、その視線に好色なものを滲ませていた。

「あの女、触られてるみたいだ」

珍しいものが見られたという喜びなのか、或いは自分も触りたいという欲望なのか、とかくそこには彼女を助けようという意思が無さそうに見えた。
つまり、周囲はみな敵。そう美咲は思う。

女性は居ないか、と彼女は思い、そしてそこで初めて良く知っている顔に気がついた。

イヤホンを耳に差し込んだ、高校生にしてはやけに童顔の少女が美咲の方を向いていた。というよりも、美咲を見ていた。

少しだけ色の入ったロングヘアと、生まれてから一回もにきびが出たことのないような肌。
あひるのように反った上唇と、濡れたように輝く下唇。
いつもおどおどとしていて、自分に自信の無さそうな表情。

――久保曜子だ。
美咲はすぐに気付いた。

眼が合った瞬間、少女はどうしていいか分からない、という様子で一瞬うつむいたが、すぐにまた美咲に視線を投げた。
自分が痴漢に遭っていることを、彼女は知っているだろうか。

生徒に見られていたとしたら、と考えると顔が熱くなる。
強い羞恥が沸き起こった。

久保曜子は笑顔なのか困っているのか戸惑っているのか分からない、ひどく曖昧な表情のままで美咲を見つめている。
そんな眼で見られても、美咲のほうも困ってしまう。
何しろ、そんな今現在もなお、彼女の股間には太い指が熱を持って這い回っているのである。

美咲の臀部の、ちょうど裂け目にあたる部分に手のひらとは違う圧力がかかった。
スーツとスカート越しであっても、それが男性器の感触であることが美咲にはすぐ分かる。

尻に押し付けて、そのまま射精しようとしているのだ。
本当ならば美咲の口や膣に挿入して刺激させて達したいところだろうが、それが出来る時間も状況も存在しない以上、男が選ぶ当然の選択肢ではあった。

熱をもち硬くなった性器が、彼女の柔らかな尻の肉に突き刺さる。
男の吐息が首筋にかかっていた。

「く」と悲鳴をあげそうになる。
思わず、久保曜子の方を見た。

相変わらず曜子はぼんやりと、美咲を見つめている。
恍惚とした表情で美咲の尻にこすり付けている背後の男に、この生徒は全く気付いていないのだろうか。

背後の男の唇が、ほんの少しだけうなじに触れた。
それは一秒にも満たない時間だったが、美咲の全身に貫くような不快感を与えるには十分だった。

さらに、それと同時に、また予想外の事態が起こった。

わき腹に指が当たったため、美咲はくすぐったさの余り「ひぁ」と声を出してしまった。
すぐに歯を食いしばって耐えたものの、間違いなく久保曜子のところまでは届いたはずである。

背後の男がうなじに軽いキスをしたのとほぼ同時に、別の手のひらが彼女のわき腹を襲った。

彼女はわき腹に触れている手を見る。
美咲の背後と左右に居る三人の痴漢のものではない。
痴漢と、傍観者の間を縫うように伸ばされた手であった。

黒い衣服はスーツではない。学生服だと、教師である美咲はすぐ分かる。
なんとかその顔を見ようとしたが、背が低い男らしくぼらぼらの黒髪とメガネがかろうじて見えるだけであった。

その男の立ち位置は、自然に美咲に触れる位置では絶対に無い。
痴漢行為に「参加したい」という意思を持って伸ばされた手であることは明白であった。

そして、この少年の動きが、美咲の周囲全体の空気を変えてしまった。

「あの女、触られてるぜ」という好奇心。

「今、手を伸ばせば触れる」という状況。

「これだけの男たちが黙認しているうえに、周囲に女が居ない以上、
 そしてこの女が激しく抵抗したり大声を出していない以上、
 触っても大丈夫ではないか」という予断。

そして何より「この生意気そうな女に触りたい」という共通の欲求。

それら全ての感情が、少年の動きによって「能動的に触りに行っても良いのではないか」という空気となって発動した。

美咲の周囲に居る男たちが、全て傍観者から痴漢へとその性質を変えていく。

下半身に触れている二本の手のひらと、一本の性器。
そしてわき腹からわきの下を確認するように動く少年の指。
さらに、好色な十数の視線が、物理的な攻撃に変化するのは時間の問題である。

美咲は本当に四面楚歌に追い込まれた。

背後の男の手が、何の前触れもなく美咲の胸に触れた。
「おもむろに」という表現では足りないほどに、その手つきはあっさりとしていてエレベータの「閉」ボタンを押すような「触るのが当たり前」という動きであった。

美咲自身は当然として、周囲にも少々動揺が広がった。
「いくらなんでもそれはマズイだろう」という感情である。

「尻を掌で触る」ことや「尻に男性器を押し付ける」こと、或いは「本を読むふりをして胸に触れる」といった痴漢行為はある意味で「わざとではない」というエクスキューズを残している、
「ドサクサまぎれ」の延長線上である。

そこには、いざとなったら言い逃れをしようという卑劣な保身が残っている。

しかし、背後から胸に手を回す行為は完全に胸を触ることを目的としていて、どう考えても言い逃れが出来るものではない。

もっとも、実際には今現在男たちがしている行為はすでに言い逃れが出来るものではないのだが、それでも「胸を触るため手を伸ばす」という行為をすることには皆抵抗があった。
「それをしちゃったら本当に痴漢じゃないか」というような奇妙な恐れが、その場の男たちにはあった。(今現在でも明らかに痴漢ではあるが)

そんな周囲の逡巡をものともせずに、背後の男は本能の赴くままに美咲のたわわな乳房に指を押し込んだ。彼女の手は飽くまでも抵抗をしようとしたが、もはや襲い来る手の数は六本に増えていた。

「張りがある」と「柔らかい」という言葉は相反しているようで、実は全くの逆というわけでもない。
つまり、「張りのある柔らかさ」というものが存在している。

例えば空気を一杯に詰めた風船は、ぴんぴんに張り詰めているが全くもって柔らかさを持っていない。
つかんでも、少しだけ指が沈むだけである。

一方で、例えば低反発クッションなどはゆっくりと指を沈めることが出来るが弾力は無く、そこにはただ押し込む感触だけが残る。

「張りがある柔らかさ」というものは、クラゲのようにぐにゃぐにゃとしたものでも風船のように膨らんだものでもない。
ある程度までは抵抗無く指を受け入れつつも、一定までいくと肉の反発が感じられ、それでいて左右にふるふると果実のように瑞々しく蠢く。

美咲の乳房には、年齢相応の若さと成熟が同居しておりこの「張りのある柔らかさ」をきちんと持っていた。
セーターと下着ごしではあったが、背後の男は美咲の乳房と、乳房を触る男の手を包むように押さえる美咲の掌の温かさと、性器を押し付けている美咲の尻の肉厚を同時に感じることができた。

もはや、痴漢同士の手と手がぶつかるほど、美咲の肉体には多数の男が群がっていた。
憂鬱な満員電車の中での、思いもがけない「ひろいもの」に男たちは蜘蛛の糸を垂らされた罪人のように眼を輝かせる。

一人の女に十数の手が襲い掛かるという、昔見た洋画のワンシーンのような光景が朝の平凡な電車内で展開されている状況は異様なまでにシュールであるが、ここを客観的に冷静に傍観している人間が居ないため、それを気にするものは居なかった。

美咲は両手を動かして飽くまでも抵抗してはいたが、それは一人の人間が雪崩を食い止めようとするような、無意味に近い行動である。

妨害するものがない今、次第にエスカレートしていく指先は美咲の唇や、わき腹、乳房、太股、股間、へそ、あらゆる部位に触れていく、バーゲンセールの中年女性のように、男たちは「今触らないと損」とばかりに盛っていた。

美咲はこの「日常の中に潜む悪意と極限状況」のすさまじさと、その渦中に自分が居ることの恐ろしさを叩き込まれるように味わっていた。

触られている。
触られている。
触られている。

それは良く分かっているが、もうどこを触られているのか、誰が触っているのか、どれに抵抗すればいいのか、美咲はほとんど判断出来ないような状態になっていた。

尻に、熱い熱いものが押し付けられている、
太股に、脚に、腰に、指が、指先が、
スカートをめくりあげようとしている。
つまみあげられようとしている。
それを抑えようとした手をつかまれて、誘導される。
自分の股間を触らせようとしている男が居る。
めくったスカートから、じかに脚を触ろうと、あぁ、

乳房をまるでマッサージするように触っている手が、
人差し指の先で乳首の位置を探すように動く。
背後の男がうなじに唾を飛ばす。舌が触れる。

「うぅ、あ」と唸って、背後の男が痙攣する。
射精したのだ。恐らくは。
スーツの股間がびくんびくんと。
トランクスの内側が精液でべとべとになっているだろう。

美咲は救いを求めるように、視線を久保曜子に送った。

久保曜子は、失望していた。

少しだけ危機状況に対して鈍感な曜子であっても、ここにきてミサキ先生が置かれている状況を把握することが出来た。

彼女は今、襲われている。
悪意に囲まれている。

そして、それを目の当たりにして
久保曜子は、失望に近い感情を抱いていた。
「助けよう」とも「逃げよう」とも思わない。
曜子はただ「みっともない」と思っていた。

ミサキ先生に抱いていた崇拝に近い感情が、男たちに囲まれて脂汗をかいている彼女の姿を見ているうちにどんどん溶けて無くなっていく。

結局、「ミサキ先生」は自分が作り出した偶像であり、やはりあの教師は、国枝美咲という一人の単なる女性に過ぎない。

十代の恋愛と同じように、十代の敬愛もやはり、簡単に霧散するものであったらしい。
久保曜子は、いともあっさりと、国枝美咲を見限った。

この閉じた世界から、自分を連れ出してくれる人を久保曜子は探していた。

中学校の頃から、クラスメートの男子や、
知的なメガネの理科教師、バレー部の先輩と、
様々な相手をその人だと決めては、
勝手に崇拝して、そして勝手に失望していった。

ミサキ先生も、違ったのか。

そう思って、彼女は車窓風景に視線を送る。
再びi-podから音楽を流し始める。
大音量。

再び外界との通信を曜子は断ち切った。
後は学校に着くまでの間、思索にふけるだけである。
既に国枝美咲のことは忘れてしまっていた。

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