痴漢王 その4
ホームに続いていく階段の下で、俺は一昔前の不良のように座り込んで階段を行きかう人々を眺めていた。
明らかに怪しい行動だが、最近の俺の空気化は神がかってきたらしく、通報も注意されることもなかった。だいぶレベルがあがってきたらしい。
ちなみに次のターゲット候補はOL。神のお告げかはわからないが、OLを痴漢しないことには次のレベルに進めないような気がしたのだ。ということで俺がローアングルでチェックしているのはOLの――脚だった。
黒ストッキングに包まれたOLの美脚と美尻――今回のターゲット部位であるそれらを念入りにチェックするために、俺はガン見を続ける。
俺の視線を通り過ぎる脚、脚、脚。太かったり、細かったり、長かったり、短かったり。なんだか人生の縮図を見てるようで、妙な悟りを開きそうになる。
そして俺は見つけた。モデルのような美脚をくねらせながら、しなやかに階段を上っていくOLを。
すらりと伸びた脚は程よくムチっとした太もももさることながら、なんとも引き締まった細めのふくらはぎも手伝って、一流デザインの建物のような美しさがあった。
張り付くような黒のタイトスカートのおかげで、お尻の形も手に取るようにわかる。歩を進めるたびに、艶かしく左右に振られるお尻に俺は引き込まれそうになった。脚、お尻、問題ナッシング。
「マーベラス」
と、俺は階段を一段飛ばしで駆け上がり、彼女の後ろにつけた。女性にしては、背が高いほうだろう。160の半ばくらいか。鎖骨あたりまで伸ばされた少し明るめの髪は、毛先にシャギーがかけられている。
ほんのり化粧も上品な感じで、まさに会社のアイドル窓口嬢という感じの雰囲気を醸し出していた。すばらしい獲物だ。
電車に乗り込むときには俺は十分に臨戦態勢に入っていた。もはや定位置と化した奥に、彼女を押し込む。いつも通りと、まずは手の甲を使ってご挨拶。
「……」
見事な無反応だった。空気化モードのスイッチはちゃんと切っているはずなので、本気で無視されているらしい。こんなことは日常茶飯事なのだろうか。さらに強く押し込んでみたりもするが、変化は無し。
続いて手のひらを返す。ヒップのラインを忠実に映し出すスカートは、それ越しにでもほどよい弾力を俺の手に伝える。やはりいい尻だ。
その行為に対して一瞬、彼女の体が強張った。が、それもほんの刹那で、また彼女は何事もなかったかのように振舞う。鼻歌でも歌いだしそうだ。
余裕ぶりやがって。なんとなくその態度が俺の癪にさわる。俺は両手の指を腰の下で準備運動のようにわきわきと動かした。
奇襲攻撃――と言わんばかりに、左手でタイトスカートをずり上げる。タイツに包まれた純白パンツがこんにちわ。うほっ、白と黒のいいコントラスト。
同時に右手をタイツの中に突っ込み、素早くそのパンツを絞り上げた。豊満なヒップに食い込むパンツ。続いて左手で、あらわになったお尻をタイツ越しに鷲?みにした。
タイツ越しのお尻という新鮮な感触。柔らかく、かつ張りがあり、しかもそれが品質の良いタイツでオブラードのようにつつまれているとくれば、まさに絶品であった。俺はその感触を堪能しながらも、今度は右手を股下に這わせる。
すぐに俺の右手は太ももへと行き着いた。お尻とはまた違う、引き締まった感触を撫でるように楽しんだ。右手に美脚、左手に美尻。今の俺最強。
「っと」
ここで俺は視線に気づく。彼女はこちらを振り返りながら、目を吊り上げて俺を睨んでいた。それは敵意すら通り越した殺意を秘めている。さすがに先走り過ぎたらしい。どう考えても通報される五秒前だ。
しかし、この逆境を好機に帰るのが痴漢王を目指す俺だ。アドレナリンが分泌され、脳内では明鏡止水がBGMとして鳴り響く。
俺の痴漢ゲージがMAXに達した。全身からオーラのように噴き出したそれは、右手に俺の魂と共に宿る。されど掌はルパンの如く~
一瞬だった。まるでそれは一陣の風の如く。
奴は大切なものを盗んでいきました。あなたの――
パンツです。
「!?」
彼女は混乱していた。無理もないだろう。一瞬で、自分がはいていたはずの下着が消えたのだ。しかも黒タイツは残したままに。
はてなマークを頭上に浮かべながら、彼女は状況確認のためか、何度も自分の股間に手をやる。
が、そんなことをしても事実が変わるわけもなく、やがて幾分か冷静さを取り戻した彼女は、耳まで真っ赤になってしまった。先ほどの強い視線が嘘のようである。
「ありえない、ありえない……」
現実逃避のような呟きを残したまま、彼女は完全に固まってしまった。意外とウブなようだ。
待ってましたとばかりに俺は彼女の股間に手を伸ばす。
「これは……」
俺は彼女の股間をひと撫でだけして手をひっこめた。少しだけ、思うことがあったのだ。
俺はおもむろに自らのグングニルを引き抜いた。そして、そのまま腰を押し込むように、彼女の股下へと滑り込ませる。
「嘘っ」
それに反応して彼女はようやく動きを取り戻す。防御本能なのか、内股気味に脚を閉じるのだが、それは俺の神槍を太ももで挟むという愚行でしかなかった。
黒タイツ越しの太ももの肉感は、俺を刺激するには十分だ。このまま腰を前後に動かせば直ぐにでも果ててしまいそうだ。
しかし、そういうわけにはいかない。
俺は腰を動かし、突き上げるように角度をつけた。すると、次に俺を包んだのは先ほど指先にて感じたあの感触
――タイツ越しのアソコという、むっちりOLの柔らかさと、タイツの良質なざらつきによるコラボレーション――
なんともマニアックでエロティックな感触。想像どおりだ。これは、まさに素股の革命と言っても過言ではないだろう。
一突きしては、脳内が痺れる。一突きしては、背筋が震える。一突きしては――
気づけば俺は果ててしまった。ほんの数回腰を動かしただけだというのに、まさに夢見心地の感触だった。
俺は未だあふれだすパトスを感謝を込めて、美尻、太ももにたっぷり塗りたくって俺は電車を後にした。OLも悪くないな。今回のことで俺はそのことを深々と学んだのだった。